復活日記
written by YOLY
生まれ変わって、虫になって。

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 2005 /10 /21
・自転車物語(問題編)
 これは、本当にあった話―

 初めにあったのは、違和感だった。
 ざらりとした砂のような感覚。
 なぜ、それが、そんなところにあるのか。

 本屋・ウルトラジャンプ・スティールボールラン

 次にあったのか、欠落した記憶。
 記憶を手繰ることが、解決への近道である。
 脳が、そう、教えてくれた。

 そうだ、僕は―

 会社の帰り道、高校時代の友人と電話をし、切った携帯電話をジーンズの左ポケットに入れた。
 僕は右利きである。だから通常物をポケットに入れるときには右ポケットに入れる。
 しかし、携帯電話を切るという動作は右手で行うため、携帯電話を持っていたのは左手だった。
 そう、だから、僕は左ポケットに携帯を入れた。

 違和感があった。
 左ポケットにはあらかじめ何かが入っていた。
 あれ、と思って取り出してみるとそれはちいさな鍵だった。
 キーアクセサリーも付いていないちいさなそれは、自転車の鍵だった。
 通常僕は右手で鍵をかけるため、自転車の鍵は右ポケットに入れる。
 それも、ポケットから飛び出さないようにぴっちりとしたコインポケットに入れることにしている。
 だから、不思議な感じがした。しかし、気にしないことにした。

 電車に乗り、地元の駅に着く。
 さて、自転車に乗って帰ろうかと思うが、思い出せない。
 自分が自転車を何処に止めたのかを。
 基本的に、2時間しか止めてはいけないという場所に10時間近く止めている。
 本当はいけないことなのだが、性器正規の駐輪場はお金がかかる上に、混んでいて止められないことが多い。
 それに、駅から遠いという問題もある。
 ただ、止めている場所は自動車が通るような場所ではないので、交通の邪魔には成らないと思う。
 それに、2時間はとめて良い場所なのだ。
 いや、本当はそれは言い訳に過ぎないと思っている。
 ちゃんと駐輪場に止めるべきなのだ。だが、今日も楽をしてしまう。

 大体どのあたりに止めたかという記憶は、常に持っている。
 20メートルくらいの坂になっているのだが、そのどこらへんに、どちら側に止めたか。
 大体覚えている。
 だが、その日は全く思い出せないのだ。
 雨が降っていたから、歩いてきたという可能性は―いや、此処に自転車の鍵があるし。
 朝、自転車に乗っていたという記憶はある。

 2時間しか止めていなかったということは、持って行かれたか。
 とも思うが、赤札が付いた自転車は残っている。
 一日以上駐輪していた自転車には赤い紙がつき、何日も放置している自転車は撤去される。
 だから、たぶん撤去された可能性は低い。
 常習犯だからという可能性も無くは無いが―。

 盗まれた可能性も考えた。
 ただ、ハンドルロック機能がある上、駐輪違反者が居ないかを見張るおじさんが居る。
 おじさんが居なくなるのは19時ごろ。今は22時。
 その頃には坂の下にあるキャバクラの呼び込みが顔を出す。
 キャバクラの呼び込みがいる前で堂々と鍵を壊し、ハンドルロックを解除するというは、矢張り考え難い。

 まてよ。僕はウルトラジャンプに掲載されているスティールボールランを買うために本屋に行った。
 まさか、本屋に…いや、本屋の前には駐輪できないようになっている。
 その上、駐輪スペースから駅までの間に本屋はある。
 わざわざ本屋の前に止めるわけが無い。

 それにそうだ。
 俺はこの坂を歩いて降りている。
 いつもどおり肩にかばんを提げ…
 止めてから、降りたのか、上から降りたのかは覚えていない。
 でも、確かに、そう、それから本屋に行き、
 ウルトラジャンプを受け取り、かばんを開け、
 ウルトラジャンプをしまい。

 良く思い出すんだ。記憶が総てを知っている。
 感覚的に判るのだ。
 家を出て。そうだ、少し早く出たんだ。
 用があったから…用?…なんだ…本を買う…
 確か、9時00分に家を出た。
 駅に着いたのは9時10分だ。

 …そうか…

 …謎は全て解けた。

 問題。
 自転車はどこにあったか。ヒントは全てこの日記にある。
 まあ、でもこれだけのヒントで100%の答えを当てたら凄いけどね。



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