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2006
/12
/20
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・或る阿呆の物語
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阿呆は涙を拭くと、 部屋が暖まっていることに気付き、 眠ろうと試みた。
だが。
阿呆は阿呆ゆえに、様々なことが気になって眠れない。 さういえば、チケットは忘れないやうに鞄に仕舞わなければいけないなあ。 さう思って、むくりと起き上がり、 チケットを仕舞ってあると思はれる場所を探る。
ない。
ぬ。
厭な汗が背を伝う。 此れは困りましたなあははは。 等と、平静を装ふも、無いものは無い。
さういえば、先週の土曜日、部屋を少し片付けた。 そこで、別の場所に移動してしまったやも知れぬ。 此れは愚かなり。 いや、だがこの部屋の中に或るはずだ。
さう思い、探すも、矢張り見当たらぬ。 厭な汗が再度背を伝う。 いやいやいや、落ち着け落ち着くのだ。 3枚とも封筒に入れて、何処に仕舞ったのだ。
さう。 見失ったチケットは3枚。
ふと部屋の隅においてあるゴミ袋に目をやる。 真逆な。 そこまで阿呆ではあるまい。
阿呆は部屋を再度探し始めた。
そこまでの阿呆であると言うことを、 30分後に知ることになるのだが。 ……良かった……ゴミ出ししていなくて……。
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