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2002
/6
/11
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・・・・眠い・・第五話
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ちゃお。
その部屋の中には、彼女しか居なかった。 中央にある白いベッド。その中に彼女は居た。彼女の体のまわりは無数のチューブや導線がまるで、ヘビのように這いずり回っていた。そのひとつでも傷ついたら死んでしまうような儚い命。ソレが彼女の人生だった。
「やあ、僕は天使だよ。」
彼女の傍らにいつの間にか男がひとり泣いていた。
「翼の無い、何も出来ない天使だ。」
男はそう言うと、彼女の手を握った。それは、ぴくりとも動かず、その部屋にはタダ機械のピ・・ピ・・ピ・・と言う音が響き渡るのみだった。
「そうだ、話をしてあげよう。僕が出会った、幾数もの人の話だ。この前はこんな人間に会った。記憶力が欠如している人間だ。彼は、物事を覚える事が出来ないんだ。どうにか救ってあげたくて接触したんだけど、でもダメだった。僕は彼を救う事は出来なかったんだ。」
「僕は、君の事も救えないかもしれない。」
「でも救ってあげたいんだ。」
「押し付けがましいかな?」
「でも救ってあげたいんだ。」
「君のために。」 「いや、」
「僕のために。」
つづけ。
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