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2003
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/28
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・無色
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初めから何も無かったのだ。と、思うべきなのである。
そもそも、此の世に物が在ると云う事自体が間違いの始まり-なのだ。 自分に、自分の記憶が存在してゐると、考へる事自体が間違いの始まり-なのだ。 箱に入りて思ふ。箱の内面はぬらぬらしてをり其の箱の外面とは全くの訣別を図ってゐる。 ギイと、箱の蓋を開示する、音が、した。
A:そして、再度、箱か。 B:そうだ。再度、箱さ。 A:一昨日の日記はわかる。少しはな。だが昨日の日記は何だ。 B:何だ。とは、奇異な言い草だな。 A:途中で、作中作が登場して、そして其れは完結していない。 B:そして又、今回も作中作さ。 A:此れは昨日の続編と考えてもよいのか。 B:そうだなあ、独立している。と考えてもよいし、続いていると考えることもまた。ありなのかもしれないなあ。 A:そして、今回は色が無い。 B:色だって。君は何を言っているんだ。 A:一昨日は赤と青、昨日は桃色と水色そして今回は無色か。 B:無色。其の言い方は間違っているな。この世の中に無色なんて色は無いさ。君が認識できる限り。 A:確かに、色はついている。だが僕らに区別が無い。 B:区別はあるさ。左を見たまえ。AだのBだのが書いてある。区別は、在る。 A:昨日までは、各々に色がついていた。 B:だが、昨日はAだのBだのは書いていなかった。 A:そういうことか。 B:そういうことさ。君は、自分の名前が言えるかい。 A: だ。 B: か。だが、 でも、 でも、 でも、 でも。 A:僕は誰だ。 B:君は君だ。 A:そうか、僕は君だ。初めから、区別など無かったんだ。 B:そうだ、初めから何も無かったのだ。と、思うべきなのだ。
蓋が開き、色がはじけた。 目があった。巨大な目。好奇心の目。目は蓋を閉じ、其の目がいう。 「今、其処で箱を拾った。」
A:君は、SOSの語源を知っているかい。 B:ストロベリー・オン ザ・ショートケーキじゃ無いことは確かだね。・・何かの略称かい。 A:Save Our Souls,Save Our Ships,Suspend Other Service...そういう説がある。が、誤説だ。 B:じゃあ、なんだい。 A:其れくらい自分で調べたまえ。其処にある、箱を使って。 B:箱? A:初めてクエスチョン・マークをつかったね。まあいい。そう、その、箱を使って。 B:パーソナル・コンピュータのことを指しているのか。 A:違うな。もっと、大きな、箱だよ。 B: かい? A:そんな事は知らないよ。僕は別に森羅万象に明るいわけではないからね。 B:君が提示した謎だぞ。 A:そうだったっけか。まあ、どうでもいいさ。又、明日は来るのだろう。 B:明日も、こうなのか。 A:いや、今日で終わりだ。書きたいこともかけたしな。 B:書きたいこと。何だいそりゃ。 A:無色。 B:ああ、これは彼に向けてのメッセージだったというわけだね。
意味は無い。勿論、虚構で在る。
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