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2004
/8
/25
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・おっぱい学。
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さて。オッパイとは何であろうか。
私は―彼に聞いてみた。
「乳房のことだね。女性にのみついている」
「ならば、乳房といえばよいだろう。それに、男にだっておっぱいはある」
「おっぱいという言い方は、古代朝鮮語に由来するのだよ」
「朝鮮だって?」
「そうだ。古代朝鮮語で吸うものという意味のパイから来ている」
「そうだったのか―ということはつまり―」
「君にしては珍しく僕が言う前に解ったようだね。そう、つまり、すわれることがない男の其れは―」
「おっぱいとは言わないということだね」
「そう、だから最初に言っただろう。女性にのみついていると」
「しかし―誰が吸うんだ」
「下世話な男だなあ君も。おっぱいを吸うといえば乳飲み子に決まっているだろう」
「たしかに。月亭可朝もそう唄っている」
「良く知っているなあ君はそんな古い歌を。嘆きのボインという曲だね」
「なら、やっぱり赤子が―」
「良くないなあ。本当によくない。君は。結論を急ぎすぎる」
「じゃあ、―」
「1967年にデズモンド=モリスが書いたThe Naked Apeという本を知っているかい」
「Naked…裸のサルだね。いや、知らないなあ」
「全く、無知無教養だな君は。まあいい。この本によるとだ。オッパイが大きい哺乳類というのは、牛と人くらいしかいない」
「サルの其れは―どうなんだい」
「乳腺が在るくらいだね」
「じゃあ、何故―」
「まあ、話を聞きたまえ。モリスのその本によれば、性交をするためにサルは外陰唇を見て発情具合を図っていたわけだ。
そして、それはサルの臀部―つまりおしりだね―の間にあった。だから、雄のサルは尻を見て発情している」
「尻を」
「そう、尻をだ。で、この尻なんだが人間は二足歩行になってしまったため、簡単に見れない」
「そうだなあ」
「そこで、この、尻が見やすい胸に来たんじゃあないかと」
「ずいぶん突飛な意見だねエ」
「まあ、そうだけれども。実際授乳にはあのふくらみは必要ないわけだからね。これは一理在る。それにだ。
日本の学者の志賀貢先生の実験によれば、おっぱいはすわれることによって快楽―クリトリスの8割程度の感度がある」
「じゃあ、矢張り性感帯として―」
「だから、君は思慮が浅いというんだよ。これは、勿論性行為のためというのも在るだろう。
しかし、それ以前に授乳行為が快楽でなければ畜生はどうして子供に乳を上げるというのだ。
つまり、これは乳房が膨らんでいないサルなどにも言えるのであって、矢張り、乳飲み子のためと見るべきなんだよなあ」
「結局どっちなんだ」
私は彼に食って掛かった。
彼はしかし、にやりと笑うと、まあ、そう慌てるな。夜は長いのだし。
文化というものもあるからねえ。
などというと、少し、用を足してくる。といって部屋を出て行った。
―つづく。
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